日頃より福島にお心をお寄せくださりありがとうございます。東北電力は10月29日に宮城県女川原発の13年半ぶりの再稼働を強行しました。(その後、危機不具合で運転を停止。) 東日本大震災以来、東日本で最初の再稼働となります。今年1月1日の能登半島地震では、半島においては原発事故が起こっても避難できないことが明らかになり、それが争われている仙台高裁の判決が11月27日に予定されています。それさえも無視した傲慢な再稼働です。
先日の総選挙では、石破首相は福島県いわき市を第1声の場としました。原発事故現場のまじかで原発には一言も触れませんでした。立憲民主党も公約から「原発ゼロ」を削除しました。福島での選挙運動でも原発にはほとんど触れられませんでした。確かに与党の過半数割れは、国民の政府への批判の大きさを表しましたし、自民党の横暴は今まで通りにはいかなくなりました。しかし、その背後では、本来議論されるべきだった重要な問題が、原発問題にせよ戦争問題にせよ顧みられなかったのではないかとの危惧がぬぐえません。
福島診療所建設委員会も女川現地抗議行動に参加してたたかいました。全国でも福島県内でも共闘の輪が画然と広がっています。国会に頼らない自主的な民衆のたたかいが社会を変えていく原動力となると思っています。それと結びついて県民の命と健康を守る地道な運動をともに進めていきたいと思っています。
今回の基金のご協力ありがとうございました。
今後ともよろしくお願いいたします。
2024年11月
日頃より福島にお心をお寄せくださりありがとうございます。8月22日東電は「燃料デブリ試験的取り出し」に初歩的ミスがあったとして中止を発表しました。ミスは作業を始めたあと協力会社(下請け労働者)が発見しました。廃炉作業には「初歩的ミス」が多すぎます。最近だけでも、コンクリート床の斫り作業中の高圧電線とのショート、汚染水を被った労働者の入院、ベント窓の閉め忘れなど、恐るべき結果になりかねないものばかりでした。
「初歩的ミス」の連発が、東電の無責任さを表していることが気がかりです。東電が実は廃炉を諦めているのではないのかと考えさせる状況ではないのでしょうか。
それでも、政府が原発回帰を進めるために、廃炉が進んでいるという仮象を取り続けているのではないのでしょうか。廃炉もできない現実を突きつけられては、新たな安全神話も崩れ、再稼働も新規原発建造も不可能になるからです。
今回の「取り出し」も880トンと推定されているデブリのうち約3グラムの計画でした。政府も東電も「廃炉まで30~40年」という計画ですが、100年たっても不可能でしょう。汚染水の海洋放出も100年たっても続けるということなのでしょうか。
廃炉工事の根本的転換がなければ、いつ再臨界が起こるやもしれない状態に私たちが置かれている事は明らかです。危険を訴え続けるとともに、県民の健康を守り抜く決意をしっかりと固め、診療所をまもっていきたいと思います。今回は基金のご協力ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
2024年9月
6月23日の長崎放送で長崎原爆被ばく者の番組が放映されました。政府は2年前、広島については被ばく者側の勝利判決を受けて「黒い雨」を認め6000人が新たに被ばく者認定を受けましたが、長崎については認めませんでした。その後、長崎市と県は13万人の「被爆体験記録集」から雨などの経験を抽出したのですが、政府は「記憶違いの可能性がある」と突っぱねました。
また、5月14日、「長崎原子爆弾放射能影響研究会」報告書(案)発表の際の会長談話では、近年、世界で低線量被ばくの研究が進んでいる事、長崎でも低線量被ばくの問題やがんの発生が認められるが放射能の影響は否定されてきたこと、同じ低線量被ばくの問題は福島にもあるなどが明かされました。しかし、少数の委員が反対したため、報告書には「確固たる知見は得られなかった」と書いたとのことです。反対したと思われる委員は、神谷研二、高村昇の両氏。福島原発事故直後、神谷氏は福島県立医大副学長に、高村氏は福島県民健康調査検討委員になり「小児甲状腺がんの多発は放射能の影響ではない」と言い続けてきました。同じ人物が政府の意を受けて福島と長崎で同じ役割を果たしていたわけです。
福島の健康を守るためには、医療に全力を傾けるとともに、国が挙げた圧迫と粘り強くたたかっていかなければならないこと、その拠点としても診療所を中心にたたかう統一を強化しなければならないことを再認識させられました。今回は基金のご協力ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
2024年7月
日頃より福島にお心をお寄せくださりありがとうございます。先日サンライズ32号のお知らせに追記したところですが、5月1日の水俣病患者・被害者団体の政府・環境省との懇談会での出来事は、それ自体としても怒りを抑えようがない問題ですが、同時に福島に直結した構造が明らかになっています。福島県民の問題でもあります。
8日の衆議院内閣委員会でこの件の追及が行われ、環境省として神ノ田昌博環境保健部長が答弁しました。「3分でマイクを切る」対応は少なくとも7年前に決められていて、たまたま今回までは実行されなかっただけだそうです。そもそも水俣病の苦しみを訴えるのに3分で足りるなどありえません。加えて、懇談そのものが、被害者の苦しみを聞くつもりなど全くない、「聞いた」ポーズをとるためだけのものだということが露骨に示されました。
神ノ田氏は、環境省から福島県民健康調査検討委員会に入っています。環境省は一貫して学校での小児甲状腺がん検査縮小を主張してきました。「水俣の経験を福島で生かす」の真意が、被害を隠し、被害者の発言を封じる事にあるのだということが、今回の出来事でますます明らかになったといえます。神ノ田氏は10日の検討委員会にはWEB出席でした。会場での福島県民からの追及から逃れるためだったのでしょうか。
福島で生きていく自体が、水俣と同様に国家の圧迫とたたかっていくことです。そのことをしっかり確認して県民の健康を守るために全力を尽くしていきます。今回は基金のご協力ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
2024年5月
日頃よりの御支援、本当にありがとうございます。サンライズ32号をお送りいたします。今号は3・11集会の特集としました。関礼子さんの講演とシンポジウムは、集会の内容を代表するといっても過言ではないものでしたのでその紹介を中心としました。
集会は、福島で様々な立場からたたかっている多くの団体の発言を受けて連帯感に満ちあふれました。宮城県からは女川原発再稼働差し止め訴訟原告団長の原伸雄さんの特別アピールがありました。
避難計画の不備に争点を絞った訴訟で、能登半島地震の話題を避け、原告に「原発が事故を起こす具体的危険性を立証する責任」を負わせる被告(東北電力)側の主張に、原発事故を経験した福島県民には信じられないような裁判の状況には参加者のみんなが憤りを感じさせられました。
4月19日には今年第1回の汚染水海洋放出が始まりました。「汚染水の海洋放出を止める運動連絡会」の結成で、福島県内の諸運動の連携が進み、放出を止められるような全県民的な高揚への一歩が開かれていることが実感させられました。
サンライズの編集には間に合わなかったのですが、4月8日、自主避難者の住宅からの強制退去が執行され裁判所の執行吏によって家財道具が運び出されている様子がテレビで報道されました。このケースは、国家公務員宿舎に避難していたものです。しかし、強制退去を請求したのは政府でなく福島県でした。政府の意を受けたのかどうか、内堀知事が前面に立っています。原発事故では東日本全体に放射能が拡がりましたが、とりわけ福島県内の被害は大きく、福島県は政府と対立してでも県民の命と健康を守るべき立場にあったはずです。自主避難者は、政府からの避難指示が出なかった地域の県民ですが、チェルノブイリですと避難の権利が認められ住宅を保障されるレベルの被ばくです。福島県は全く逆に被ばく限度を20ミリシーベルトに引き上げて帰還を強制する始末です。その究極の非人間的所業こそ今回の強制的な追い出しと言えます。
3・11集会への渡辺瑞也さん(小高赤坂病院長)のアピールに「東日本各地で”核分裂関連物質被ばく症候群”とみられる様々な症候群が増え続け、死者数も有意に増えているという複数の報告があります。」と紹介されているとおり、小児甲状腺がん(今では若者となっていますが)以外にも健康被害は広がっています。福島県が県立医大を先頭に健康被害を隠そうとする圧力と対決するとともに県民の健康を守り続けていくためにもふくしま共同診療所の活動を守りともに歩んでいきたいと思います。今後ともよろしくお願いいたします。
<追記>
水俣病の被害諸団体と政府との懇談で被害者側の発言中に音声マイクを切った件で、事務方の責任者として衆院内閣委員会で「従前よりマイクの音を切るという対応を含め、環境省の事務方で対応例を準備してきた」と説明したのは神ノ田昌博環境保健部長でした。この人物は、福島県民健康調査検討委員会の委員でもあります。それも「水俣の経験を福島で生かす」との触れ込みで委員会に入った人物です。どう生かそうとしているのかハッキリと確かめなければなりません。
さる3月19日、福島県議会は自民党から出されていた「教育現場におけるALPS処理水の理解醸成に向けた取り組みを求める意見書」を可決しました。教職員組合の研修会の中で「汚染水」という表現があった為と説明していますが、憲法にも反する教育への政治介入です。地元紙を含めてマスコミはほとんど報道していませんが、とんでもないことです。
県議会の意見書は、教育委員会を通じて学校現場への圧力となります。こどもたちを放射能から守るべき学校現場で形を変えた「安全神話」を教えるよう強要されることになりかねません。
汚染水の海洋放出は原発回帰のために欠かせないものですが、福島では放出反対の行動が繰り返されており、県民の反対の声は、放出開始後むしろ強まっています。世論を変えるために学校で「上から」教え込もうというのでしょう。しかし、逆に原発が民主主義とは相いれないものだということを証明することになっています。この「意見書」を撤回させることと結びつけて、汚染水海洋放出を中止させるためにたたかっていきましょう。
福島では、多くの県民が健康への不安を抱えています。浪江町の住民を中心に「健康手帳」を求める運動が広がっており、診療所も協力していく事を決めました。小児甲状腺がんをはじめ県民の健康を支えていくために全力をつくしていきます。今回は基金のご協力ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
2024年4月
3・11集会には各裁判の原告、原発事故被害者をはじめ幅広い皆さん150人が集いました。シンポジウムではそれまで異なった立場にあった方々が、自分自身と家族を守るためには国家に立ち向かうしかなかった経緯を語っていただき、今に至る怒りが会場全体を包みました。コーディネータの関礼子さんは、講演もなされましたが、風化が人為的にすすめられている構造を説明され、今日の集会のようなたたかいの重要性を訴えられました。
また、県外からは女川原発再稼働差し止め訴訟原告団長の原伸雄さん、県内でたたかう諸団体の代表者からの発言があり、本当に心が熱くなる集会でした。
福島では、多くの県民が健康への不安を抱えています。診療所を中心に健康を支えていくことと、処理汚染水放出反対を同時に進めていくことが重要だと思っています。今回は、基金のご協力ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
2024年3月
日頃より福島にお心をお寄せくださりありがとうございます。
2月19日、東北電力は女川原発を9月に再稼働させると発表しました。再稼働をめぐる訴訟は仙台高裁に差し掛かっているところですが、原告団は避難計画が成立していないことを焦点にたたかっています。
1月1日の能登地震では道路の寸断、孤立、家屋倒壊などに加えて港が使用できないなど、志賀原発事故に対する避難計画の無力が明らかになったばかりです。女川原発がある宮城県牡鹿半島は能登半島よりもはるかに細い半島で、陸路での避難は原発直近を通る以外にありません。能登の現状を無視して女川原発再稼働計画を進めるなど、どこまで住民の命を軽視しているのでしょうか。
3月11日には震災14年目を迎えます。
震災は全く終わっていません。帰れるに通しさえない地域がある一方で、チェルノブイリでは立ち入り禁止になる線量のもと帰還を強制され、双葉町のように農地を耕作しないことに罰金を科す脅しまでする地域があります。
小児甲状腺がんも増え続けています。被災地の苦悩は日々つのっています。今年の3・11集会は、各地域で裁判に立ち上がっている原告団が合同でシンポジウムを行います。女川からも発言があります。福島の現状を浮き彫りにするものになると思います。多くの方々にご参加いただけますようお願いいたします。
福島では、多くの県民が健康への不安を抱えています。診療所を中心に健康を支えていくことと、処理汚染水放出反対を同時にすすめていくことが重要だと思っています。今回は基金のご協力ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
2024年3月
日頃より福島にお心をお寄せくださりありがとうございます。12月2日、アメリカ、日本など21か国はCOP28の陰に隠れて原発3倍化を声明しました。これは地球環境破壊への対抗に逆行するものです。問題になっているのは人間活動が地球そのものに影響を与え始め、生命の存在さえ脅かすに至っていることです。地質学にいう地球の「人新世」時代の特徴に「地層にプルトニウムが含まれている」点があります。地球史上はじめての人工放射能です。トリチウムの海洋放出はこの点でも取り返しのつかないことを意味します。事故を起こした福島からの放出には他とはくらべものにならない危険性がありますが、同時に世界中の原発から膨大なトリチウムが放出されていること自体が重大です。脱原発の動きを逆転させて、このタイミングで原発3倍化が声明されたことは憂慮にたえません。新たな核軍拡の時代が始まっているように感じられます。福島の汚染水放出反対のたたかいは、この全体の構造の中で重要な役割を担っています。
11月24日久しぶりに一般傍聴者を入れて県民健康調査検討委員会が開かれ、双葉郡医師会の重富氏が新座長に選出されました。議論では甲状腺検査中止論が後退し、重富氏は「県民の要望であるので検査は継続する」と発言しています。とはいえ、2013年以降の出生者は対象になっていませんから、このままでは検査そのものが先細りになる状況を打開する方向は見られませんでした。
福島では、小児甲状腺がんとたたかう若者を先頭に、多くの県民が健康への不安を抱えています。診療所を中心に健康を支えていくことと、処理汚染水放出反対を同時に進めていく事が重要だとおもっています。今回は、基金のご協力ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
2023年12月
日頃よりの御支援、本当にありがとうございます。サンライズ31号をお送りいたします。予定よりも大きく発行が遅れてご心配をおかけしました。申し訳ありませんでした。
サンライズには書けませんでしたが、入稿の後で大変な事件が起こりました。10月25日、福島第1原発のALPS処理の前段階で仮設ホースが外れ、高濃度の汚染水を下請けの労働者5人が被り、2人が入院した事件です。今回の作業とは、汚染水をALPSに通す前段階でいくつかの金属を取り除き、最後にその装置を洗浄するというものでした。デブリに直接接触した汚染水を扱う作業です。東電はこれまでそういう手順があったことさえ発表していませんでした。汚染水処理の基本的な手順を仮設の設備のままで行い、しかも労働者がカッパを着ていなかったことは。危険な被曝労働の管理がいかに無責任であったのかも明らかになりました。
この件で記者会見を開いた東電は、見え透いたウソで逃げようと図りました。漏れた汚染水は100ミリリットルだったと発表し、放射能濃度については質問に答えませんでした。しかし被曝した労働者は現場で除染できないほど濡れていたため、参加した記者の誰一人納得しませんでした。そのため、後日訂正せざるを得ませんでしたが、漏れたのは数リットルだったし、濃度は45億ベクレル/リットル以上だったというのです。
東電はこれまでも虚偽と隠ぺいを本質としてきた企業です。その東電に汚染水の処理をゆだね続けていいのかどうか疑問とせざる得ません。
東電と政府は、漁業者との約束を勝手な解釈で反故にし、8月24日、汚染水海洋放出をはじめました。すでに3回の放出も終えています。その間、福島の海のトリチウム濃度の変化についても東電は「基準値(10ベクレル/リットル)以下」としか発表していませんが、実際には放出前には0.5ベクレル/リットルだったものが2回目の放出後では2.2ベクレル/リットルに上がっています。何十年にもわたっての放出でどうなるのか。それは世界の海に広がります。1日も早く放出をやめさせるために全力をあげましょう。
サンライズの今号にはALPS処理汚染水放出に関する基本的な諸問題のいくつかを掲載しました。読者の皆さんにとっては今更ですが、政府・マスコミのプロパガンダでしきりに「科学的」といっているにはIAEAが認めているという以上ではありません。
今回は初めて皆さんからのお手紙を掲載しました。主に漁民の小野さんのアピールへの賛同でしたが、お手紙のひとつひとつが感動的でしたし、診療所関係者のだれもが励まされました。本当にありがとうございました。この感動を読者の皆様と共有したいと思い、特集ページといたしました。今後も折に触れて皆さんのお声を紹介したいと思います。よろしくお願いいたします。
以上
10月25日、福島第一原発事故で重大事故が起こりました。汚染水ALPS処理の前段階で仮設ホースが外れ、下請けの労働者5人が被曝して2人が入院しました。基本的な作業がこれほど危険でずさんな管理と設備(仮説タンクと仮設ホース)で長年行われていたとは。しかも東電は当初の記者会見では汚染水は100ミリリットルだったと発表し、放射能濃度を明らかにしませんでした。記者の追及で後日。汚染水は数リットルで濃度も45億ベクレル/ℓいじょうだったことが明らかになりました。あらためて東電のウソと隠ぺいの体質が浮き彫りになったといえます。本来はこの事故の原因と責任を明らかにするまで処理汚染水に関わる作業を停止すべきは当然ではないでしょうか。
「関係者理解なしにはいかなる処分もしない」と文書で約束しながら。8月24日に第1回、10月5日に第2回目、11月5日に第3回と処理汚染水放出を強行しています。放出によるトリチウム濃度の変化を東電はいずれも基準値(10㏃/ℓ)を下回っているとだけ公表しています。しかし実態はは取水地点によって違いがありますが、放出前は0.5㏃/ℓ、第2回目直後は2.2㏃/ℓと計測されています。回を重ねるごとに多くなることは間違いなく、一日も早く止めさせなければなりません。さらに、世界にあふれている原発からのトリチウム放出を止めさせ、原発そのものを止めさせましょう。
福島では小児甲状腺がんとたたかう若者を先頭に多くの県民が健康への不安を抱え、しかも県、県立医大などが統計を操作して放射能被害を隠していることで二重に苦しめられています。診療所を中心に健康を支えていくことと、被曝の拡大を防ぐための処理汚染水放出反対を同時に進めていくことが重要だと思っています。今回は基金のご協力ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
2023年11月
政府・東電は8月24日、ALPS処理汚染水の海洋放出を始め、10月5日からは2回目の放出を始めています。これを既成事実化させないで1日でも早く中止させねばなりません。放出中止を求める裁判をはじめ、あらゆる方向からたたかいを強めたいと思っています。
10月10日、政府と熊本県が、さきに水俣病の未確認患者の訴えを全面的に認めた大阪地裁の判決を不服として大阪高裁に控訴しました。その理由は「1977年判断条件と違う」「メチル水銀の暴露状況が国際的な科学的知見と相違する」というもので、福島でさんざん聞かされてきたものと全く同じです。福島では小児甲状腺がんがすでに300人を超えていることに対し、「この被ばく線量ではがんにならないというのが科学的知見、だから放射能の影響とは考えられない」との循環論法です。事実を前にしてはそれまでの知見の方を変えなければならないというのが科学的な態度ではないでしょうか。今回の水俣病への態度を見ても政府にはご都合主義が骨の髄までしみついていることをつくづく感じます。
甲状腺がんの若い当事者たちが立ち上がり、裁判に訴えています。かれらの陳述は、一人一人がどんなに苦しみ、人生を変えられたきたか手術した医師に「命にかかわる」と言われたことなどを明らかにしています。県民健康調査検討委員会は、この事態を無視して「無害な小さながんを見つけているだけだ」と言い続けているだけです。ふくしま共同診療所は、この原告たちを医療を含めて支えていくために全国の医師ネットワーク形成の呼びかけに加わっています。さらに県民の命と健康を守るために全力でたたかっていきたいと思っています。今回は基金のご協力ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
2023年10月
日頃より福島にお心をお寄せくださりありがとうございます。8月24日、政府・東電は汚染水海洋放出を始めました。発表でも30年間、実際にはさらに延々と放射能の垂れ流しが続きます。政府・東電は全漁連、福島県漁連に対して「関係者の理解なしにはいかなる処分もしない」と約束しています。全漁連も福島県漁連も「反対の姿勢はいささかも変わりません」と表明しています。これを勝手に「一定の理解を得ている」と「解釈」した次第です。
8月30日、郡山市で「国・東電の住民説明・意見交換会」が開かれました。市民団体が6月から要請していたのですが、国・東電側が引き延ばしてきたものです。回答は不誠実でしたが、ほころびもありました。タンクの約6割にはトリチウム以外の各種が残っています。これはもう一度ALPSを通しても、すべてを除ける保証はありません。処理過程で出る高線量の汚泥については処理方針もありません。そもそも880トンと推定されているデブリはいまだに何もわかっていない状況です。国側は、カナダやヨーロッパの研究機関による内部被ばくの危険性の指摘を「それは科学的ではない」と否定しましたが、「それでは国の立場が科学的だという根拠は何か」との質問に回答できませんでした。東電は「処理水の中で養殖しているヒラメに異常がでていない」と言っていますがまだ1年も経っていない「実験室」のヒラメとアワビで放射能の影響が検証されるはずもなく、何の意味もないことは明らかで。それをもって科学だと偽る姿勢の方が問題ではないでしょうか。
9月8日には「汚染水の海洋放出を差し止める」訴訟がはじまり、建設委員会も原告団に加わりました。何より、放射能から県民の命と健康を守るために、診療所とともに全力でたたかっていきたいと思っています。今回は基金のご協力ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
2023年9月
8月6日の「NHKスペシャル」の内容は衝撃でした。番組は1945年のアメリカ、1947年のソ連の原爆開発のウランがコンゴの同じ鉱山のものだったというものですが、ニジェールで起きたロシア(ワグネル)に支援された軍事クーデターを想起させたからです。ニジェール産ウランは、EUの原発の25%を占めており、そのためにフランス軍が駐留しています。ロシア(ワグネル)がフランス軍を攻撃する可能性は切迫しており、ウクライナと連動した世界戦争の危機が高まっています。原発が戦争と結びついており、各国政府やIAEAなどの原発に関する振る舞いはそのためです。
8月7日には「政府は8月下旬か9月上旬に海洋放出することで調整」と報道されました。8月18日にアメリカで行われる日米韓3か国首脳会談で了承された後、閣議決定する運びとのことです。漁民の了承も県民の了承も関係ありません。岸田首相は「漁民との信頼関係は進んでいる」と一方的に話しています。
7月20日には県民健康調査検討委員会が開かれました。これまでのコロナを理由にしたマスコミ以外の傍聴禁止を今回も継続しました。新たに14人が甲状腺がん(疑いを含む)と確認され、集計外を含めると359人になりました。地域別の統計で「被ばく線量との有意な関連はない」との発表について、記者会見では「統計は明らかに地域差がある」と質問されたのに対し、鈴木委員は「もっと調整すれば差が見えなくなる可能性がある」と主張しました。ここでも「放射能とは関係ない」との結論が先にあるのです。
汚染水海洋放出に対し、全県民の一致した反対運動がおこっています。全国でも連帯行動が取り組まれています。診療所も放射能から県民の命と健康を守る立場からそれらの運動に参加し、全力でたたかって行きたいと思います。今回は基金のご協力ありがとうございました。今後tもよろしくお願いいたします。
2023年8月
日頃より福島にお心をお寄せくださりありがとうございます。原子力規制委員会は7日、東電に対して汚染水海洋放出の施設への「終了証」を交付し、放出への手続き完了とされています。3日にはIAEAグロッシ事務局長が来日し、放出は安全だとする「報告書」を岸田首相に手渡しました。IAEAは各国の原発が排出しているトリチウムを安全だとしている、原発推進のための国際機関です。その「報告書」も、「責任は日本政府にあり、IAEAは推奨も支持もしない」と書いています。それを「お墨付き」と言いまわっている政府の姿勢に国際的にも批判が寄せられています。
岸田首相は「時期は自分が決断する」と言っていますが、依然として「関係者の理解なしにはいかなる処分もしない」との約束が立ちはだかっています。6月22日には全漁協の総会があり、6月30日には福島県漁連の総会があり、いずれも全会一致で放出反対の特別決議を採択しました。政府は「金の力」で屈服させようとするのでしょうが、「海洋放出が始まってしまえば半永久的に続くので同じ苦労が延々と続く。子や孫の代が福島で漁を続けていけるか心配」との漁民の声もあります。(毎日新聞)どれだけ希釈しようとも、半永久的に続く汚染水は海水や魚にトリチウムを蓄積させ、漁民や沿岸住民を苦しめます。しかも汚染水にはトリチウムだけでなく、猛毒のストロンチウムなども残されています。
労働組合、市民団体などの漁民との連帯した行動も本格的に活発化しています。診療所も放射能から県民の命と健康を守る立場からそれらの運動に参加し、全力でたたかっていきたいと思っています。今回は基金のご協力ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
2023年 7月
日頃よりの御支援、本当にありがとうございます。今号は、「原発汚染水を海洋放出するな!原発いらない☆ふくしま集会」の報告特集です。福島県内の様々な運動、裁判原告団などが結集し、今も続く苦悩やたたかいが共有され、画期的な内容となりました。同実行委員会では「報告集」の発行を準備しています。完成しましたらあらためてご案内するつもりでおりますので、その際はよろしくお願いいたします。なお実行委員会のホームページで集会の内容が閲覧できますのでそちらもよろしくお願いいたします(https://z59sfprjjp.wixsite.com/311nonukes-fukushima)。
5月18日相馬双葉漁協、25日いわき漁協の汚染水海洋放出問題での国・東電との意見交換会が開かれました。これまで漁協幹部との対話はあったものの、漁協一般組合員への説明は初めてのことでした。どちらの会場でも「決めてから説明とはどういうことか」との詰問がありました。「関係者の承認なしにはいかなる処分もしない」という漁協との約束があります。「約束を守るのか」「強制執行ではないのか」という会場からの追及に、国・東電側ははぐらかすだけでした。「安全」も「IAEAが認めているだけ」、風評被害にも「(補償のための)基金が用意されている」だけ。漁民からは「後継者がいなくなる」との声がありました。「3・11集会」で小野さんが「漁民としてのプライドがある」と言われていましたが、福島の漁業関係者みんなの心意気だと感じられました。18日も25日も県漁連の野崎会長が「反対は変わらない」という宣言で締めくくられています。岸田首相は「自分で判断する」と公言していますが、どういう権限でそう言っているのでしょうか。
5月24日には仙台地裁で「女川原発運転差し止め請求訴訟」の判決がありました。原告の訴えには回答どころか検討すらなく「原告は原発事故が起こることを立証していない」から「避難計画が妥当かどうかの検討は必要ない」というものでした。「原発安全神話」そのものです。東北電力は女川2号機を2024年2月に再稼働するとしています。これは2011年3月11日東日本大震災被災地での最初の再稼働になります。原告団は宮城県と石巻市の「避難計画」が机上の空論であることを立証の中心に据えてきました。実際におきた福島の避難は過酷なものでした。数十万人がその過程で命を落としています。そのため原子力規制委員会も、自治体の「避難計画」を原発再稼働の前提だとしています。今回の判決はそれさえ必要ではないというに等しいことです。
現在CO2削減を口実とした「GX法案」に含める(隠す)形で原子力法改悪がこの会期中にも参議院で成立させられようとしています。そこでは原発維持が「国の責務」とされています。
3・11福島原発事故以降、全部の政党が「脱原発」とか「脱原発依存」とかへの転換を表明してきました。原子力基本法改悪はその大逆転になります。汚染水海洋放出も仙台地裁の判決もその国家的再転換に呼応したもの言えるのではないでしょうか。あらためて3・11の原点に返ることは重要なのでは、と思います。
2023年6月
日頃より福島にお心をお寄せくださりありがとうございます。東電は、5日から6日にかけて汚染水海洋放出のための地下トンネルに海水を注入しました。放出に向けた最終局面です。7日には相馬双葉漁協の代表が西村経産相と面会し、5月には福島県の2か所で漁協一般組合員と政府・東電との意見交換会があり、激しい反対の声があがりました。政府・東電は、「関係者の理解なしにはいかなる処分もしない」との漁民との約束には答えないまま、漁民を無視して一方的に強行している現実があります。
さらに東電は5日、原発港湾内で5月に捕獲したクロソイ(地元で人気の魚)から、食品衛生法の基準値(100Bp/1キログラム)の180倍となる1万8千ベクレルの放射性セシウムが検出されていたと発表しました。クロソイは2月にも相馬沖で放射性セシウムが検出されています。問題は今も放射能が出続けていることです。さらに、排出された放射能がどう流れるのか、魚にどう蓄積されるのかなど、まったく不分明なことです。
問題は海だけではありません。4月には1号機の圧力容器の土台(ペデスタル)の鉄筋がむき出しになっていることが確認されました。東電は「時間をかけて安全性を確認する」と言っていますが、5月24日の原子力規制委員会では「(東電は)楽観的、大丈夫とは言えない」との意見が出たそうです。震度6程度の地震で圧力容器が倒壊するおそれもあり、その場合には東日本全体が人の住めない地域になる恐れもあるとのことです。政府はすべてを隠して5月31日、国会で原発回帰のGX法を強行採決しました。
チェルノブイリの経験からも、放射能の影響は長く続きます。汚染水放出は被ばくの拡大です。福島県民の健康を守る診療所の活動と共に、県民のたたかいの先頭に立っていきたいと思っています。今回の基金のご協力ありがとうございました。今後ともよろしくお願いお願いいたします。
日頃より福島にお心をお寄せくださりありがとうございます。政府・自民党は防衛費増額の財源を確保するための特別措置法案(財源確保法案)を5月中にでも成立させようとしています。大軍拡を国家の最優先課題とする、改憲にも匹敵する暴挙です。その上、ここに東北の被災地復興のための特別増税の一部が含まれています。もちろん、復興予算のほとんどが東電を含む大企業のために使われ、生活再建にはまわされていないことは指摘しておかねばなりません。しかし、それでさえさらに後回しにしようというのです。
一方、2022年には、東電の原発事故補償金の負担がゼロだったことがわかりました。赤字だったからとのことです。原発事故の時、東電の国有化が回避されたことには多くの疑問がありました。事故処理にせよ除染にせよ補償にせよ国家予算を使う他なく、東電そのものが処理されるべきでした。ところが多くを富裕層が所有している東電株や東電債が「紙切れ」になることを回避するためにだけ、つじつまの合わない国家予算投入を続けてきました。東電の負担分さえ電気代値上げで補填してきました。今、多くの裁判で次々と東電の補償への態度が批判され、補償を見直さざるを得なくなっています。その状況の中で、さらに国家予算(税金)で東電を保護するとはどういうことなのでしょうか。
岸田首相は汚染水海洋放出を「自分の責任で決める」と言っています。「合意なしには放出しない」という漁協との約束を無視することです。福島県民だけでなく、近隣諸国、太平洋諸国はじめ国際的関心も高まっています。健康を守るためにも追加の被ばくをしないことが必要です。
全国の皆様とともに福島県民と共に海洋投棄反対の運動を進めていく決意です。この度は、診療所建設基金をおよせいただきありがとうございました。
今後ともよろしくお願い申し上げます。
2023年5月
日頃より福島にお心をお寄せくださりありがとうございました。皆様の御協力で「原発汚染水を海洋放出するな!3・11原発いらない☆ふくしま集会」(郡山市公会堂)はたたかう意欲にあふれた集会とデモとなりました。新地漁協小野治夫さんのビデオメッセージは海に生き、海を愛する漁民の命がけの訴えで参加者全員の胸をふるわせました。浪江町の漁民、高野武さんからの絶対に汚染水海洋放出を許さない決意を込めたメッセージが紹介されました。「原発事故から12年を語る」パネルディスカッションでは、双葉町から集団で避難した人たちの壮絶な経験が語られました。(堀切さんの映画に描かれています)。さらに、津島原発訴訟原告団、子ども脱被曝裁判原告団からのアピールなど、県民の生活とたたかいの現状が訴えられました。集会は、汚染水海洋放出反対を県民全体の力を集中してたたかおう、全国民にともにたたかおう、という決意に満ちたものとなりました。なお、集会の報告集は「3・11実行委員会」で準備されていますので、できましたら改めてご案内いたします。
4月4日、東電は福島原発1号機内にある原子炉圧力容器の土台(ペデスタル)が損傷している様子の映像を公表しました。床から1メートルまでのコンクリートがなくなり鉄筋がむき出しになっています。東電は数か月かけて耐震性の評価を見直すとしていますが、とんでもないことです。鉄筋だけになって耐震性が保たれているなど考えられません。政府には、ことの深刻さを受け止め、帰還強制を止め、原発回帰政策を撤回し、再臨界を阻止することと大規模な避難のための方策に集中する責任があります。
福島県民の健康を守る診療所の活動とともに、県民のたたかいの先頭にたっていきたいと思っています。今回は基金のご協力ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
2023年4月
日頃より福島にお心をお寄せくださりありがとうございます。岸田政権は2月28日、原子力基本法を含む法案の改正を閣議決定しました。基本法では、原発を「最大限活用することを国の責務とする」という改正で「脱原発依存」といってきたことからの逆転です。さらに60年を超える老朽伝発の使用を認め、その管轄を原子力規制委員会から経済産業省に変更しました。この問題では2月12日の原子力規制委員会で使用延長を可決しています。同委員会の議決自体が異例だそうです。石原委員は「安全側への変更ではない」と反対しました。別の委員は「外部からせかされた」と発言しています。その直前には委員会事務局と経産省との会合が数回あったのですが、内容は未だに隠されています。原子力規制委員会は、福島原発事故を受けて「推進側とい規制側が同じ役所にいた」ことを反省して、経産省から独立したはずのものです。今回の決定は、原発事故の教訓と反省をすべて投げ捨てたということです。
この転換の流れを止めるのがトリチウム汚染水放出をめぐるたたかいです。2月末に福島県内の漁港を訪れた西村経産相は「関係者の理解なしには放出しない約束はどうなっているのか」という漁民の質問に「丁寧に説明を続ける」「何をもって了解とするかは決まっていない」というはぐらかしに終始しました。
3・11原発事故以降、ふるさとを追われ、農地や漁場を奪われ、命と健康を脅かされてきた福島県民は、全力でたたかって生きてきました。そして今、新たに海に放射能を流し、被ばくを拡大することに対して、全県民の力を合わせ、力を振り絞ってたたかいに立ち上がろうとしています。3・11集会はその重要な一歩です。
福島県民の健康を守る診療所の活動と共に、県民のたたかいの先頭に立っていきたいと思っています。今回の基金のご協力ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
2023年 3月
日頃より福島にお心をお寄せくださりありがとうございます。環境省は1月、「福島第1原発の処理水を今年の春から夏にかけて海洋放出する」と発表しました。それまでに放出の工事を終える見込みだ、という趣旨でした。しかし、「関係者の理解なしには放出しない」との漁恊との約束は無視されたままです。漁民たちの怒りは漁港での「出初式」でも口々に表明されています。記者から質された環境省は「500億円の基金を用意した」と事も無げに言い放ちました。カネさえ払えばいい、というのが政府の姿です。
トリチウムの被害は「風評」にとどまるものではありません。放出する原子力施設周辺でがんの増加が明らかになっていても、国際原子力諸機関は「ベネフィット(利益)が優先される」と、産業界の利益のためにはある程度の犠牲は仕方がないという立場です。日本政府がいう「国際基準」とはこの基準のことです。
岸田政権は、昨年末、「新型原発を増設する、老朽原発の運転を延長する」と決定しました。安倍政権でさえ、本音は見え透いていたとはいえ、表向きでは「原発の新設は想定していない」と言い続けていました。それは3・11原発事故以降の国民の抵抗の大きさがあるからにほかなりません。岸田政権は、国民の怒りを軽く考えているとしか思えません。それだけに、放出を許さない、実際に阻止するためのたたかいが求められています。全国のすべての皆さんと力を合わせて、あきらめずたたかっていきます。
フクシマをなきものにする圧力のもとで、福島県民の健康は依然として脅威にさらされ続けています。診療所の責任もますます重要になっています。今回は基金のご協力ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
2023年 1月
日頃より福島にお心をお寄せくださりありがとうございます。「ふくしま共同診療所」は12月1日で開院10年を迎えました。開設から10年を通して診療し続けることができているのも奇跡的なことです。ひとえに皆様の御支援の賜物とあらためて感謝申し上げます。
県内の医療機関に絶大な影響力を持っている県立医大が「放射線安全神話」の中心となり、民主的と思われていた病院まで「放射能の影響ではない」という立場をとる中で、県の医療行政とたたかいながら医療を続けるのは並大抵のことではありませんでした。ともすれば孤立するようにみえる局面もありながら、被災者をはじめ多くの県民が支持し、支えてくださっていること、全国から支援の手が差し伸べられていることで、ようやく維持できてきました。岸田政権があらためて原発回帰に舵を切ろうとしている中で、福島の健康被害をなかったことにする圧力がますます強くなるだけに、診療所の果たすべき役割もいよいよ大きくなっていると思っています。
経産省は11月28日、今後の原子力政策の行動計画として、新型原発の新増設、老朽原発の運転期間延長などを提案し、年末までに政府として正式に決定すると発表しました。これは2030年代までの原発ゼロ化をはじめとする、原発事故後に決定された政府の行動計画を根本的に転換するものです。安倍政権でさえ「フクシマを忘れるのか」という批判を前に、「新増設は想定していない」と言い続けてきました。来年に迫った汚染水海洋放出もその一環です。
チェルノブイリでは居住禁止になっている線量でも、福島では帰還が強制されています。そのうえでの汚染水海洋放出です。政治とは裏腹に放射能による健康被害は今後も続きます。福島県民の命と健康を守るためのたたかいはこれからいよいよ必要になります。
この度は、基金募金のご協力ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
2022年12月
日頃より福島にお心をおよせくださりありがとうございます。新型コロナが第8波の拡大を見せています。その時期に自民党は山際氏を党のコロナ対策本部長に任命しました。統一教会との関係で閣僚を更迭したわずか4日後のことです。岸田政権も自民党も、コロナについても統一教会問題についても真剣に向き合っていません。コロナについては「経済活動」を口実に混乱を繰り返しながら、削減してきた保健所や病院の病床問題など、基本的対策をいまだに手も付けていないことが大問題です。山際氏の人事を主導したのは、安倍元首相の最側近で自ら統一教会での講演を繰り返してきた萩生田政調会長だと言いますからこの問題についても政権の本当の姿は隠しようもないと言わざるを得ません。
10月30日の福島県知事選挙は、内堀知事の3選となりました。この内堀知事も統一教会もうでを繰り返してきた政治家の一人です。さらに問題なのは、県民にとって差し迫った重大事である汚染水海洋放出の争点隠しに終始した点です。8月には自ら放出のための本格工事を許可しておきながら「処理水は福島県ではなく国全体の問題だから政府が説明する」との発言を繰り返し、漁民はじめ反対の声をあげる県民の方を見る事さえしませんでした。その徹底した「だんまり」に対して内堀選対の中からさえ選挙演説の中では「私は放出に反対だ」という人まで現れ、自民党県連もまた選挙結果を「処理水についての県民の意思表示とは考えていない」と言明したほどです。
実際の準備はお構いなしで進んでおり、汚染水放出は来年に迫っています。しかし大多数の県民は被曝拡大に反対し、命と健康を守ろうと考えています。その声を結集できれば放出を止める事ができます。県民の命と健康を守ろうという診療所の出発点にもかかわる問題として結集の先頭に立ちたいと思っています。この度は、基金・募金のご協力ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
2022年11月
日頃より福島にお心をお寄せくださりありがとうございます。9月7日に「3・11子ども甲状腺がん裁判」第2回公判が開かれました。東電側は「100ミリシーベルト以下の被曝ではがんにならない。原告たちの被曝は20ミリ以下だ」と主張しました。推定線量は国連科学委員会(UNSCEAR)の推論に依っていますが、それ自体が論理的にも成立しない政治的なものです。100ミリシーベルト問題には何の根拠も示されていません。なにより、300人以上の小児甲状腺がん(成人を除いて)という現実こそが出発点です。この公判で意見陳述した高校生は、小学校にあがる前に被曝し、中学生の時に発症して手術を受けたが高校生になって再発し、リンパ腺まで摘出して今もアイソトープ治療に苦しんでいることを証言しました。彼女に対して、東電側弁護士は「検査を受けなければよかった、とは思わないのか」と人とも思えない言葉を浴びせています。
先月の「安倍国葬」は、日本という国自体が理性を失ってしまったと思わせました。国民の6割が反対です。岸田首相は「弔意を強制しない」と言いましたが、「国を挙げて追悼する」とは、国民のすべてが追悼したことにされたことです。公文書改ざん、役所をあげた偽証すべて警察・検察まで使ってもみ消ししてきた人物を「国民を挙げて」「追悼」したことにされてはたまりません。福島にとって我慢できないのは、「放射能は安全だ」「原発の新設も心配ない」と言うために犠牲を「なかったことにする」ことと全く同じ構造だからです。
福島県、医師会などすべてを巻き込んで被害を隠そうとする構造と対決し、現地での医療拠点として、子どもたちをはじめとする県民のたたかいに連帯し、命と健康を守っていきたいと思います。今回の基金のご協力ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
2022年10月
日頃より福島にお心をお寄せくださりありがとうございます。9月1日の県民健康調査検討委員会で新たに8人が甲状腺がんと発表されました。集計外を含めると327人、手術を受けた人が237人となります。これに先立つ7月20日、「原子力放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)は「放射能は県民の健康に影響していない、甲状腺がんはスクリーニング効果」との報告書を内堀知事に手渡しています。スクリーニング効果だと2巡目以降ではほとんどないはずです。「3・11子ども甲状腺がん裁判」に今月になって新たに加わった女性は、小学校6年生の時に被曝し、2年ごとの検査を受け、昨年に初めてがんが見つかった時には直ちに手術しなければならない大きさだったそうです。UNSCEARは勝手に被ばく線量を「推測」して、低線量だからがんにはならない、と言っているだけです。
UNSCEARは、科学とは名のみで原子力推進のための国際組織に他なりません。岸田政権は、これまでの自民党政権も言えなかった本格的な原発回帰、次世代原発の開発、老朽原発の運転延長を打ち出しました。これは福島の教訓に蓋をし、なかったことにすることです。癌に苦しむ青年たちを存在しないかのように扱うことです。UNSCEAR報告はこの岸田政権の転換と意を通じたものです。
「ふくしま共同診療所」が県民健康調査の甲状腺検査に参加すると申し入れたのに対しても、福島県はUNSCEARに賛成しないと認めない」と何年たっても「保留」したままで事実上拒否してきました。県民の命と健康を守るために、あくまで反対の立場を貫き、医療拠点としての役割をはたしてまいります。今回は基金のご協力ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
2022年9月
日頃より皆様の御支援本当にありがとうございます。サンライズ28号をお送りいたします。いよいよ発送しようとした矢先(8月24日)にとんでもないニュースが飛び込んできました。岸田内閣が次世代原発の開発・建設を検討する、というものです。福島原発事故後、自民党は「できるだけ原発依存を低減」と言ってきたし、政府としても新増設や建替えは「想定していない」としてきたものを根本的に転換し、原発に回帰するという宣言です・これまで最大60年(それも例外だとして)としてきた原発運転期間も延長するというものです。福島原発事故の教訓も被害者の苦悩もすべて「なかったもの」にして踏みにじる攻撃への転換です。
ウクライナ戦争によるエネルギー危機が背景とされていますが、ロシア軍の原発占領によってヨーロッパ全体が原発事故の脅迫をされている時に、何という安全軽視なのでしょうか。
原発再稼働を許さないたたかい、来年に迫ったトリチウム汚染水海洋放出を許さないたたかいも新たな段階に入りました。新たな被曝を許さないため、本当に止めなければなりません。漁民を先頭に県民全体のたたかいの高揚で県政、国政を変える事が必要です(サンライズ27号を参照してください)。そのための団結拡大と強化に力を尽くしていきたいと思います。
サンライズ今号は、保養をめぐる問題を特集しました。従来から、避難できないご家族や個人に保養をおすすめしており、ご要望に応じた紹介も行ってきました。短期間であっても放射能の高い環境から離れる事が健康被害を減少させることがわかっています。チェルノブイリ事故では保養の権利が国家によって認められ、受け入れ団体も日本を含めて国際的に広がりました。その経験が福島原発事故でも大きな力となりました。
しかし、事故後10年を超えて、保養をめぐる環境に大きな変化が起こっていました。「総会で『隠れキニシタン』上映を行いました」(2面)で関久雄さんのお話を紹介しましたが、保養に出かけること自体を「風評をあおる」と非難される風潮さえあり、「被曝への不安を隠して暮らす人もいます」という状況が広がっています。
加えて、約3年間つづく新型コロナ流行の影響で、受け入れ団体と保護者の双方が打撃を受けており、全国的に保養の中止が相次ぎました。コロナ対策は重要ですし大変です。しかも絶対に感染しないという保証があるわけでもありません。だからと言って被曝の危険が減るわけでもありません。そこで、最大限のコロナ対策を施しながら保養を再開しようとする努力が積み上げられてきました。今回は通年で受け入れている4団体・個人の紹介をしましたが、休暇シーズンに募集する受け入れ団体も少しづつ増えています。このまま保養を下火にしないために、改めて保養をめぐる問題に焦点をあわせて企画したしだいです。
原発再稼働を主導してきたのが安倍元首相です。旧統一教会の分配を差配していたのも安倍元首相です。そしてその下で旧統一教会施設に出入りしていたのが内堀福島県知事です。これ以上この勢力の跋扈を許さないためにも、安倍国葬に反対しましょう。
2022年8月
日頃より福島にお心をおよせくださりありがとうございます。8月1日県民健康調査検討委員会の評価部会が開かれ「原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)」の「放射能は県民の健康に影響していない、甲状腺がんはスクリーニング効果」との報告書が紹介されました。それでは200件を超える手術を、裁判での青年たちの真摯な陳述をどう受け止めるのか。さすがに「何十年か経たないと確かなことは言えない」との発言もありました。しかし、福島県は「UNSCEARにしたがっていく」としています。
福島県と双葉町、大熊町は8月2日、東電に対しトリチウム汚染水放出にむけた本格工事を許可し、東電は4日、工事に着手しました。漁民をはじめ関係者はだれも絶対反対を変えていません。直後から様々な市民団体が抗議の声をあげています。これ以上、被曝を拡大しないために、漁民の生活を守るために、来年に向けて県民の、そして全国の団結を広げ、汚染水放出を阻止したいと思います。
岸田政権は、閣議決定だけで「安倍国葬」を決めました。「モリ、カケ、サクラ」と公文書偽造、官僚の偽証によって政権を延命してきただけです。内閣改造の上辺では「旧統一教会と関係しない」と言いながら、その中心人物を「国葬」にするとはどういうことでしょうか。内堀福島県知事も最近まで検討委員会座長だった星北斗参議院議員も、選挙中は旧統一教会の施設をまわっていたそうです。
「3・11子ども甲状腺がん裁判」など、子どもたちを守る多くのたたかいと結びつき、あくまでこどもたちの健康を守るためにたたかって行きたいと思います。今回は基金のご協力ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
2022年8月
日頃より福島にお心をお寄せくださりありがとうございます。7月10日の参議院選挙は自民党圧勝、福島では星北斗氏が当選しました。星氏はこれまで福島県民健康調査検討委員会の座長として、「甲状腺がんは原発事故と関係ない」との結論をとりまとめてきましたが、選挙戦の中では触れないできました。「誇れる経歴」ではなかったのかもしれません。なお、選挙を前にして私たちは各候補者に対して「汚染水海洋放出をどう考えるか」を公開質問状で尋ねましたが、星氏からは何の回答もありませんでした。
最高裁判所は、原発事故で避難した住民らが国に損害賠償を求めた集団訴訟で、6月17日、国の責任を認めない判決を出しました。4つの高等裁判所のうち2つでは国の責任が認められていました。最高裁では、これらの審理内容はまともに検討せず、「現実の地震・津波は想定よりはるかに大規模で、防潮堤を設置させても事故は防げなかった」から国に責任はない、という無責任な判決でした。
一方、トリチウム汚染水海洋放出にむけて、東電は県の容認のもと、いまだに認可がないにもかかわらず実質的な工事を進めています。しかし、福島県漁連は6月30日の総会で、「あらためて断固として反対する」と特別決議をあげました。漁民とともに来年に向けて福島県民の怒りと反対の声を集めて、その力で放出を止めたいと考えています。あらたな放射能被害を拡大させてはなりません。
「3・11こども甲状腺がん裁判」など、子どもたちを守る多くのたたかいと結びつき、あくまで子どもたちの健康を守るためにたたかっていきたいと思います。今回は基金のご協力ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
2022年7月
日頃より福島にお心をお寄せくださりありがとうございます。3・11子ども甲状腺がん裁判が始まりました。5月26日の第1回口頭弁論では、原告の一人から3度の手術、放射線治療を受け、大学も辞め、就職も夢もすべて諦めるしかない現実が話されました。これを前に、政府や県は「検査する必要のない微小がんを発見している」のだとなおも強弁するのでしょうか。被告の東電は、原告の供述は必要なく、科学的な立証を中心にと主張しています。しかし6人の原告、300人の甲状腺がん患者の苦しみを見ない「科学」とは何でしょうか。
6月4日の毎日新聞で約40年前の被曝2世の健康に関する国の調査研究報告書の存在が紹介されました。厚生省がその目的を「被曝2世の不安を取り除くため」とした調査です。報告書の結論は「被曝2世については、原爆放射能に起因する健康障害は発生していないというのが現在の学問的事実」というもので、これが「科学的知見だ」というわけです。しかし実際のデータを見ると白血球が2割少なく、尿たんぱくの異常者は約5倍だった、検査されたはずの肝機能に関する記載がないなどの不備があった、というものでした。
福島県民健康調査検討委員会が5月13日、7か月ぶりに開かれました。星座長が参議院選挙に立候補することから棚上げにされてきたものです。この日の委員会で後任に高村昇氏が選任されました。高村氏は、原発事故直後、飯館村で「注意事項を守れば、健康に害なく村で生活していけます」と講演した人物です。
原発維持のために科学をゆがめる政府、県、東電とたたかい、子どもたちの健康を守るためにたたかっていきたいと思います。甲状腺検査縮小に反対しながら、健康を守る診療所の活動を支えていきます。今回は基金のご協力ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
2022年6月
日頃より福島にお心をお寄せくださりありがとうございます。東京電力は4月25日、汚染水海洋放出のための海側の準備作業に着手しました。陸側ではすでに海底トンネルの入口部分にあたる立て坑を掘削していました。この工事を巡っては、原子力規制委員会の審査はほぼ終了ですが、認可や地元自治体の同意はまだです。東電は、同意の必要のない部分だと言っていますが、とんでもないことです。「漁民の同意がなければ着工しない」と約束していますが、どの漁民も反対の姿勢を崩していません。「3・11集会」での遠藤順子医師の講演でも明らかなように、トリチウムは風評被害にとどまらない健康被害をもたらします。集会は<汚染水海洋放出を止めよう>をテーマに開かれました。いよいよその本格的な過程に入ったものと思っています。
一方で、県民健康調査検討委員会が昨年秋から半年にわたって何の説明もなく開かれていません。この委員会は、中立を装いながら「放射能の影響ではない」と言い続けてきました。ところが、座長である星氏が7月の参議院選挙に自民党公認で立候補する予定だと公表されました。その中で星氏が以前から自民党役員だったことも明らかにされました。つまり最初から中立ではなかったのです。星氏は座長辞任もしていません。検討委員会は甲状腺検査縮小を誘導し、放射能の影響解明を妨害するとともに、甲状腺がん早期発見の道を閉ざそうとしています。この星氏を当選させるなど許されることではありません。
汚染水海洋放出をとるための、福島のたたかいの連帯を実現するための先頭に立ちたいと思います。また、県民の健康への脅威でさえある甲状腺検査縮小に反対しながら、健康を守る診療所の活動を支えていきます。今回は基金のご協力ありがとうございました。
日頃より福島にお心をお寄せくださりありがとうございます。原発事故当時6~16歳だった若者6人が1月27日「がんの発症は原発事故による被曝が原因」として東電を提訴しました。2人は甲状腺を片側切除、4人は全摘です。肺に転移した人もいます。通学さえできない体で大学中退や退職、就職をあきらめたりが現実です。再発の不安を抱えたまま、生涯、ホルモン薬服用が必要です。
原告の女性は新聞インタビューに「事故が関係ないなら、なぜこれほど甲状腺がんの子がでているのか。今後もなる子がいるかもしれない」と語っています。周囲の圧力の中、本当に勇気のいる必要だった決起です。
一方、EUの欧州委員会が、原発を「環境に配慮した投資先」として認めた(直後にフランスは原発新設を決めた)ことに、小泉氏、細川氏ら5人の元首相が連名で方針撤回を求める書簡を送っています。その中で「多くの子どもたちが甲状腺がんに苦しみ」と記載していました。内堀福島県知事はその記載をとらえて「本県の現状を述べる際は、県の見解に基づくよう」求める文書を送ったといいます。
300人近い甲状腺がん発症者を前に、毎日の生活も困難な若者を前に「放射能の影響とは考えにくい」「過剰診断だ」と言い続ける政府や県は、原発再稼働・新設のために、ウソをつき通しているとしか言いようがありません。学校検診縮小もそのためです。トリチウム汚染水の海洋放出もそのためです。
6人の若者を支援するために、トリチウム汚染水の海洋放出を阻止するために、診療所も漁民をはじめとする県民の統一したたたかいの先頭にたちます。それが、新たな被曝を許さず、子どもたちの命を守る道だと思います。今回は基金のご協力ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
2022年2月
あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。元日早々、EUの行政執行機関にあたる欧州委員会は、原子力を「環境に配慮した投資先」として認める方針を発表しました。ドイツなどの反対もあり断言できませんが、1月中に欧州委は正式に決める見込みです。日本の岸田政権も、アメリカで研究がすすんでいる小型原発の導入に積極的です。福島原発事故から10年が経ったばかりだというのに、私たちがいまだに放射能に苦しんでいるというのに、カーボンニュートラルを口実に原発回帰とは。
政府が昨年4月に決定したトリチウム汚染水の海洋放出も原発回帰の伏線にほかなりません。財界上げて日本のエネルギーコストが高すぎて世界に勝てないと言っています。自動車のEV化は原発9基分の電力を必要としているとか、リニアにも電力が不可欠だとか。カネもうけこそが大事で、国民の犠牲には目もくれないのが本音です。だから「合意なしには放出しない」という魚協との約束さえ一方的に破ってきたのです。原発事故で放射能を放出した東電が、あらためて汚染水の形で放射能をだすことなど許せるものではありません。ましてや原発再稼働や新型原発の開発に進む事など認められません。
7割もの自治体議会で反対や慎重さを求める意見書などが可決されていますが、政府・東電はそれすら顧慮しないでいます。だからこそ、福島の怒りを共にする様々な人々、運動体が自分自身の声をあげはじめています。私たちもあらたな団結をつくりながら、汚染水放出阻止の一点での統一を訴えていきたい、3・11をその一歩にしようと思っています。福島の子どもたちの命を守るためにも、診療所が先頭に立ちたいと思います。この度は、基金募金のご協力ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
2022年1月
日頃より福島にお心をお寄せくださりありがとうございます。新聞報道によると、県民健康調査検討委員会の星座長が、来年参議院選挙の自民党公認候補に内定し、本人も意欲的だそうです。地元紙では1面トップの扱いでした。論功行賞がどうかはわかりません。しかし、紛糾するたびに「座長一任」をとりつけ、結論をあいまい化してきた運営が、自民党と同じ方向性だったことは否めません。彼が座長をとつめている8年間で、甲状腺エコー検査の被検者は目に見えて減少しました。被検者を減らし、甲状腺がんの発見を抑制するというのは、子どもたちの健康と命を守る立場といえるでしょうか。10月15日の検討委員会では、新たに6人が甲状腺がんと診断されています。その陰では、検査が縮小されていることによって実際のがんの進行が隠されていることでもあります。これ以上の縮小は絶対に認められません。
政府は、抗議の声を無視して、トリチウム汚染水海洋放出のための調査を始めました。しかし「関係者の理解なしにはいかなる処分もしない」という東電と県漁連との合意があり、福島県内で7割以上の市町村議会の反対または慎重の意見書・決議があります。一方的な政府決定だけで規定事実とすることができないことは当然です。漁民にとって海は生活、生命活動そのものです。原発事故を起こした原因企業が、さらに追加の放射能を流すことは罪の上塗りです。県内では様々な運動体から、立場を超えた反対運動の統一を呼びかける訴えが続いています。汚染水放出を実際に阻止することにかけた団結によって社会も変えるようなたたかいが求められているのではないでしょうか。
福島の子どもたちの命を守るために、診療所も反対運動の先頭に立とうとしています。甲状腺の学校検診縮小を許さず、県民の命と健康を守りましょう。この度は、基金募金のご協力ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
2021年12月
日頃よりの皆様のご支援、本当にありがとうございます。サンライズ26号をお送りいたします。今号は、9月に行われた「第4回 被曝・医療福島シンポジウム」の報告が中心です。とりわけ、トリチウム汚染水の海洋放出に対する遠藤順子医師の指摘は、切迫している事態の中で、海洋放出を何としても止めるために、福島県民だけでなく全国民、全世界の人々にぜひとも必要な内容です。ぜひ参考にしていただきたいと思います。
内堀知事が「風評被害への補償」しか発言しないのに対し、県民の声は、7割以上の市町村議会が反対ないし疑問の決議をあげていることにも明らかです。県漁連を先頭に漁民は「ふるさとの海をこれ以上放射能で汚すな」と必死の声をあげています。地元の漁民には地元の海が命だと訴えています。まして政府・東電は「関係者の理解なしには、いかなる処分もしない」と約束していたのであって、その一方的な破棄は漁民を足蹴にするものです。原発事故の加害者が、何の反省もなく、自分勝手な都合で被害を加重しようとしていることは、事実上、原発事故を今度は意図的に繰り返すということではないでしょうか。
10年前に大震災と原発事故に直面して数十万人の人々が原発事故を叫んだたたかいを思い起こしもう一度、立場の違いを超えて、すべての人々の力を合わせる時ではないかと思います。
先の総選挙でも、福島県内10人の候補者に公開質問状を送り、布施幸彦院長、希望の牧場代表の吉沢正巳さん、津島からの避難者・石井ひろみさんの3人で記者会見を行いました。そこで汚染水放出に反対した立憲民主党の金子恵美さん、日本共産党の熊谷智さんの2人を支持してたたかうことを表明し(金子さんは当選、熊谷さんは落選)、今後、本当に汚染水を阻止するために、広範な県民とともに反対運動を前進させる決意を表明しました。まずは来年3・11に向かって、重層的に統一行動を広げていきたいと思います。
10月末、「NPO法人3・11甲状腺がんこども基金」が発表した臨床状況についての報告では、福島県外の甲状腺がんでは、51.7%が全摘しているのに対して、福島県内では1.2%と大きな差があると指摘されています。これは、県民健康調査が早期発見・早期治療につながっている何よりの証です。いまだに、実態として検査縮小が進んでいるのに甲状腺がん発見が続発しています。これは放射能の影響以外に説明できないことです。県と政府(環境省)が「過剰診療だ」として検査を中止しようとしているのは、その証拠隠滅(安倍政権以来、日本の官僚組織の常とう手段になってしまった)にとどまらず、今後も多発していく甲状腺がんを、重症化することを放置することになります。この報告書を受け取った県の担当医が回答しなかったことも疑問です。
ここでも問題は10年前に引き戻されているように思います。原発と人類は共存できない、すべての原発を廃炉にしなければならない。子どもたちの健康と命を放射能から守らなければならない。その課題は今、汚染水放出を絶対に止めること、小児甲状腺がん検診の中止・縮小を絶対に許さないことにかかっていると言えます。診療所を守っていくことと、診療所を拠点に運動を広げることを共にたたかっていきたいと思います。
2021年12月
2021年9月
2021年8月
2021年7月
日頃より福島にお心をお寄せくださりありがとうございます。6月2日、新潟地裁で原発避難者訴訟の判決がありました。原告237世帯805人という規模で、自主避難が多くを占めています。東電に加えて国にも責任があることを争ったのですが、認めないという判決でした。国の責任については、これまで地裁判決では7件が勝訴、7件が敗訴(高裁では2件が勝訴、1件が敗訴)でしたが、これで敗訴が8件となりました。いずれの裁判でも、争点は政府の「地震調査研究推進本部」が公表した地震予測の「長期評価」に基づいた対策をとっていれば被害が防げたという点におかれ、今回含めた8件で、政府が政府機関の研究結果を軽視していいんだという判断でした。ただ、勝訴の裁判においても本当に想定を上回っていた場合には政府の責任は問えないというものです。安全対策をとったとしても、原発はいったん事故があれば取り返しのつかない放射能被害をもたらします。原発の存在を許さないことが重要です。新潟判決の積極面は、自主避難の権利を認めたことですが、認定した賠償額は33万円から1万円と信じられない程低いものでした。裁判は高裁に移動しますが、原告団とともにたたかっていきたいと思っています。
国民の半数以上が反対しているオリンピックをめぐっては、菅首相の見苦しい言い訳が続いています。その中でも出発点にあった「アンダーコントロール」の大うそ、「復興五輪」の位置づけが全く出てきません。当時からこじつけにすぎなかったのでしょう。その後「コロナを克服した証」などの変遷もありましたが、それも消えてしまっています。残ったのは利権、利権、利権というところでしょうか。
コロナに関しても、政府は医療体制の整備には何の責任もとっていません。その間にも福島では放射能による健康被害がすべての年齢層で続いています。学校検診の縮小を許さず、県民の命と健康を守りましょう。この度は、基金募金のご協力ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
2021年6月
日頃より福島にお心をお寄せくださりありがとうございます。5月11日、憲法改悪に向けた「国民投票法改正」が衆議院で採択されました。立憲民主党はだまされたふりで賛成するという恐るべきものでした。現在の政権にすぐに改憲に踏み切る力があるとも思えませんが、一つの関門が破られたことには違いありません。むしろ、与野党ともに弱体化がすすむことへの批判がより強権的な支配に道を開きかねないという恐れが感じられます。コロナへの不安を、中国を引き合いに権威主義への受容に傾けようとする動きさえあります。国民の命を犠牲にして「国威発揚」のためのオリンピックを優先する姿勢も「デジタル庁」で上からの情報統制と国民管理を強めることも、ともに権威主義による支配に道を開こうとしている疑いがあります。
関西電力は、6月には福井県の美浜原発を再稼働します。福島第1原発事故以降、はじめての「40年超」の老朽原発再稼働です。福島の事故を受けて政府自身が設けたはずの「原則」を取り外したものです。福島のトリチウム汚染水海洋放出は、漁民をはじめ関係者の「合意なしに放出しない」という約束を反故にするものです。甲状腺検査の結果、どんなにガンが出てもひたすら御用学者に「放射能が原因とはいえない」と言い続けさせています。そういえばトリチウム汚染水を「飲んでも平気なんだろ」とうそぶいた麻生副総理は、以前「改憲は、ナチスのようにいつの間にかがいい」と言ったことがあります。福島の現場で、命を、人権を守ることは改憲とのたたかいの最前線でもあることを実感しています。
コロナによる医療崩壊は全国に広がっています。政府は緊急事態を宣言しても、医療体制や検査体制の整備には何の責任もとっていません。その間にも福島では放射能による健康被害がすべての年齢層で続いています。学校検診の縮小を許さず、県民の命と健康を守りましょう。この度は、基金募金のご協力ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
2021年5月
日ごろより福島にお心をお寄せくださりありがとうございます。菅政権は4月13日朝、福島第1原発のトリチウム汚染水を海洋放出することを決めました。「地元の関係者の同意なしにはいかなる決定もしない」という約束を一方的に破り捨てたものでした。薄めたからといって放射能の総量が減るわけではありません。トリチウムには内部被ばくの危険があります。世界中の原発周辺で白血病や乳がんが増えていますが、トリチウムの処理のコストのため、世界の原発関係団体の共同したウソによって隠蔽されています。
コロナ第4波が、オリンピック「聖火リレー」の日程に合わせたご都合主義によるコロナ緊急事態解除との関係を疑われています。「リレー」は福島からの出発でしたが、地道に放射能測定をしている市民団体の発表データは、1日目の浜通り(海岸沿い)コースの7割近くで土壌汚染密度が「チェルノブイリ法」での避難基準を上回っているというものでした。そもそも福島の原子力緊急事態宣言はいまだに解除されていません。その下で、福島県民には年間20ミリシーベルトが強要されています。オリンピックなど許せるはずもありません。
3月22日に県民健康調査検討委員会の甲状腺検査評価部会が開かれ、福島県立医大から2017年までで、検討委員会の集計以外に24人の小児甲状腺がんの手術を受けた人がいたとの発表がありました。うち21人は、検査B判定から「保険診療」に回され、そのまま集計からはずされたグループでした(3人は県の甲状腺検査を受けていない)。よりリスクの高いグループを隠すことが批判されながら、もう4年も言を左右し続けていた存在です。まだ、2018年以降と、今回では除外されている福島県外での手術例が明らかにされなければなりません。
放射能による健康被害は小児甲状腺にとどまりません。すべての年齢層で、他のがん、心疾患などが増えています。小児甲状腺がんの実態はその指標です。学校検診の縮小を許さず、県民の命と健康を守りましょう。この度は、基金募金のご協力ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
2021年4月
日頃より皆様のご支援、本当にありがとうございます。サンライズ24号をお送りいたします。前号で、緊急の基金・募金のお願いをいたしまたところ、多くの方からご協力を頂きました。本当にありがとうございました。新型コロナの影響はまだまだ続いており、今後ともよろしくお願いいたします。
今号は、印刷に回すばかりの時に震度6強の地震が起こり、記事を差し替えました。ところがその後にもっと深刻な事態が続いています。1号機、3号機の格納容器の水位が下がり続けており、炉内の圧力も下がっていることが判明しました。注水量を増やして対応していますが、重大事故の危険が今でも続いていることを意味しています。また、炉内の水や空気が漏れ、環境中に放射能が漏れだしている事でもあります。政府も県もそんなところに「復興のみせかけ」のために住民の帰還を強制し、はては補助金付きで他県からの移住を進めようとしていますが、とんでもないことです。
その上、3号機の地震計が昨年7月以来、故障したままで13日には役に立たなかったというのです。東電は故障を知っていて放置していました。それが東電の体質だといえばそれまでなのかもしれませんが、こんな無責任な企業にこれほど危険な状態にある事故原発を委ねていていいのかどうか、その方が深刻だと言わねばなりません。
1面の「原発事故当時0歳と2歳の女児が甲状腺がんに」という意味について、もう少し説明が必要だったかもしれません。これは、チェルノブイリではこの年代の子どもから多数のがんが発生しているが、福島ではもう少し年長だということをもって「チェルノブイリとは違うから放射能の影響ではない」という説があるのですが、その「根拠」が破綻したということです。言うまでもなく別表の数字そのものが放射能の影響以外には考えられないことを明らかにしています。
2-3面では、渡辺瑞也医師の講演レジュメを紹介させていただきました。先生は、日頃からご自身と入院患者さんの避難の経験と浜通り(海岸沿い)を中心にした患者さんをはじめとする住民の生活と密着した実感を大切にして訴え続けておられます。今回は、特に広島の「黒い雨訴訟」判決を取り上げて、福島にひきよせ、これから長い時間をかけたたたかいが続く事、内部被曝をあきらかにすることの重要性を強調されたものです。
「3・11反原発福島行動」のチラシを同封いたします。最大限のコロナ対策を講じていますのでおいでくださいますようご案内いたします。
ただ、2月13日の地震によって会場の体育館が修繕工事の必要があることがわかりました。そのため急きょ、会場を近くにある「郡山野外音楽堂」に移すことになりました。なお、写真展は予定通り体育館の柔道場で開きます。
2021年2月28日
あけましておめでとうございます。まもなく震災・原発事故から10年。ここまで来られたことへの皆様のご支援にあらためて感謝申し上げますとともに、これからも続くたたかいに、さらなるご支援をお願いいたします。
政府は3・11式典を10年で区切り、今年限りで終わらせます。もう本当に原発事故をなかったことにしよう、カーボンニュトラルを(無責任に)掲げて女川原発再稼働と新型原発開発にすすもうというのです。
昨年末、帰還強制のとんでもない人権侵害が明らかになりました。福島県が東京の公営住宅に避難している人の親族に対して「退去するよう説得しろ」と圧力をかけていたのです。避難者を犯罪者扱いし、親や親せきとの間にいさかいを持ちこんで人間関係を破壊して孤立させる、かつて成田空港に反対する農民に対した仕打ちと同じやり方です。
その一方で今年4月から「避難指示が解除された地域に県外から移住する人に最大200万円支給する」制度がはじまります。さらにそこで起業する人には、費用の4分の3を支給するというのです。どんなに帰還を促しても2割しか返っていない現実があります。その4割は高齢者です。うわべだけの除染では帰ろうにも帰れないのです。それを糊塗し、県外の人たちをカネで誘導して外見だけの人口をそろえて復興を言い募り、原発事故の傷を隠してしまうおうというのが政府の政策だというのです。放射能による健康被害を広げることは意に介さないのが政府の立場です。それは新型コロナに対しても「経済」(特定の業界)を優先して感染を広げる中途半端な政策にも連なっています。
福島では新型コロナを契機に甲状腺検査を縮小・中止する動きがあります。食い止めるためにも3・11を忘れない運動が必要です。そのためにも福島の現場で医療を確保することが重要です。この度は基金・募金のご協力ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
2021年1月
日頃より福島にお心をお寄せくださりありがとうござます。原発事故から10年を迎えようとしている中、政府、東電による作為的虚偽が、しかもそのために教育まで使っていることが明らかになりました。
11月10日、福島県議13人が福島第1原発の視察を行い、一人が「私たちが測っているのはトリチウムを含む処理水が入ったボトルです。処理水の安全性について、科学的に確認することができました。」とツィートしました。ところが、写真を見た「おしどりマコ」さんが、写っている線量計のメーカーに問い合わせたところ、ガンマ線(γ線)の空間線量しか測れないものでした。トリチウムが放出するのはベータ線(β線)ですから、検出できなくて当然です。東電はそれと知って意味のない計器を貸し出して県議たちをだましていたのです。マコさんのその後の調査では、新聞社の取材にもそのたびに同じ線量計を貸し出していたこと、そこでは通産省の官僚が同席し、線量計をかざして見せていたことまで明らかになっています。政府も共犯だったのです。それについて11月26日の記者会見で質問された東電は「ベータ線は測れない」ことを認めたうえで「それを説明したかどうかは把握していない」と、まるで安倍前首相の答弁のようだったとのことです。
政府と県によって9月20日「東日本大震災・原子力災害伝承館」が開館しました。
原発被害を過去のものにするための施設ですが、政府や東電への批判を禁止したことで、たくさんの語り部が辞退しました。その後、全国の修学旅行や地元高校生たちを引き入れたり、学校教員の研修の拠点にされています。教育の場を利用して科学を装い「放射能は安全」との偽りを広めようといることを許すことはできません。
子どもたちを無防備で放射能にさらしてはなりません。そのためにも福島の現場で医療を確保することが重要です。この度は基金募金のご協力ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
2020年12月
日頃より皆様のご支援、本当にありがとうございます。予定より大幅に遅れまして皆様には大変ご心配をおかけしました。ようやくサンライズ23号ができましたのでお送りいたします。
今号は、学校健診縮小に踏み込むことへの反対が中心です。がんの拡大が隠し切れなくなってきたために、検査を無意味化し、疫学調査ができないようにするものであり許すことができません。
今号は印刷までの間にとんでもない事件が起こりました。いうまでもなく菅首相による学術会議の任命拒否とその理由の説明拒否です。この問題の影響は、福島では身に染みて感じられます。
原発事故直後、現地入りしようとした研究者が理不尽な圧力で妨げられ、放射能の測定をできませんでした。それに乗じて政府は「放射能の飛散は少なかった」との虚偽の宣伝を今も続けています。山下俊一教授が送り込まれチェルノブイリについての自著での記述と正反対の「放射能はニコニコしている人には来ない」との講演を県内で繰り返しました。この発言自体はその後の裁判で問題とされ「間違っていた」と謝罪しましたが、「科学的知見」だとして県民を誤誘導したこと、県民健康調査検討委員会の事前の秘密会議を主宰したことなどには口をつぐんだままです。県民健康調査検討委員会は今でも甲状腺がんの多発を隠し、「放射能の影響ではない」と言い続けています。
今回の学術会議問題は、日本の科学全体をゆがめ、福島で起こっていることを全国化するものです。学術会議そのものはそれほど権力に強くないエリート集団ですが、これを「アリの一穴」とする科学への全面的介入の警戒が高まっています。官僚への人事権を使って公文書を偽造し隠蔽する組織に作り変えてきた経験を科学の全分野にわたって政権の都合で使えるものにしようというのでしょうか。そのために任命拒否の理由を言わないで忖度させる手法なのでしょう。
福島ではもう一つ深刻な事態は、トリチウム汚染水の海洋放出問題です。汚染水を廃炉が終わるまで数百年にわたって大量に垂れ流し続ける問題です。漁民をはじめ関係者のほとんどが反対し、公聴会でも反対意見が多い、その現状に逆らって菅政権は「スピード感」を強調して放出を強行しようとしています。先月末にも閣議決定の予定だったものが延期になったものの、予断はゆるされません・実際に韓国、フロリダなどでトリチウムが疑われる乳がんが報告されています。ここでも内部被曝の危険を否定しトリチウムの危険を否定する虚偽が「科学的知見」と称して流布されていることが問題です。
科学への政治的介入は、独裁国家への転換を許すかどうかの分岐点なのかもしれません。
福島では、甲状腺がんだけでなく、他のがんも他県に比べて多くなっていることが明らかなのですが、政府も県も認めていません。国民の健康の為には医学でも政府からの独立が必要です。何よりも福島現地で、どんな圧力にも負けない診療所を守ることがますます必要な状況になっています。長いたたかいになると思いますがよろしくお願いいたします。
2020年11月
日頃より福島にお心をおよせくださりありがとうございます。東日本大震災・原発事故から10年目を目前にしています。いまだに線量が高く帰還できない地域が多く残っています。数万の福島県民が避難を続けています。その時期に、11月11日、宮城県の村井知事は女川原発の再稼働への同意を発表しました。被災地の原発としてははじめてのことです。その記者会見の場で「原発がある以上、事故が起こる可能性はある。事故があったらダメとなると、すべて乗り物を否定することになる」と述べました。現場では避難経路さえ見通せないままなのにです。県知事レベルで権力を持つ人々の間で、原発事故について交通事故になぞらえて当然とする認識があることにあらためて慄然とします。原発事故が起こってもいいというのです。この会見の数日前に村井知事は近県の知事にも意見を求めたのですが、福島県の内堀知事は「何も言うことはない」と述べています。隣県の原発再稼働に対して何の意見もないということがありうるでしょうか。
菅首相は、学術会議の任命問題の問題でも答弁の支離滅裂さが際立っていますが、原発問題での答弁でも迷走を繰り返しています。カーボンゼロに関連して「原発新設は考えていない」と答弁しながら、通産省の「新型炉の研究をすすめる」との答弁との矛盾を追及され「矛盾しているとは思わない」とこれまた支離滅裂の答弁に終始しました。これこそ、政府の本音が原発維持だということと、国民には説明する必要はないと考えていることがにじみでたものだと思います。
原発事故以降10年、甲状腺がんだけでなく、胃がんはじめ多くのがんが福島で多発しています。国、県をあげてその事実を隠蔽しようとしていることを越えて真実を明らかにし、県民の健康を守っていかなければなりません。そのためにも、放射能被害とたたかう姿勢を明確にした医療機関を守ることが重要だと思っています。
この度は、基金募金のご協力ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
2020年11月
日頃より福島にお心をおよせくださりありがとうございます。日本学術会議の問題では、批判が国際的にも広がっています。菅首相は、「行革との関係で学術会議のあり方を検討した」「理由は個人情報の為コメントしない」と述べたきりです。任命を拒否された一人が「理由を言わないことは疑心暗鬼と忖度を招く」と批判しています。むしろそれこそが狙いなのでしょう。日本学術会議がどこまで本当に独立しているのかはともかく、法律で独立性が規定されています。今回の菅首相の行為は、自分の都合を「科学」の名を騙って正当化するにとどまらず、科学の全分野に「疑心暗鬼と忖度」とを広げるものです。
科学への政治的干渉はこれまでもすすんでいました。今回は、これまで隠然と行われていたことを大ぴらに、したがって全面的なものにしたということです。これは福島にとっても重大です。原発爆発事故直後にも放射能測定が妨害されたこともあります。それは今も放射能安全神話に引き継がれ、甲状腺がんのデータが恣意的に操作されている現実ともなっています。このまますすめば、県民健康調査検討委員会でも疑問を出すような委員が追われることになりかねません。そのことで政府や県のウソを暴く端緒が隠されるかもしれません。汚染水処理は喫緊の課題ですが、しかも菅首相自ら「急ぐ」と言った課題ですが、ここでも科学的立場が表明されない危険もでてきます。菅政権は安倍政権以上に危険な政権だと言わざる得ません。
原発事故以降、甲状腺がんだけでなく、胃がんはじめ多くの福島での多発が明らかになっています。それも県や県立医大のデータ隠蔽をかいくぐって真実をつかんだものです。この中で福島県民の健康を守ることは菅政権の科学への介入と対決することぬきにはできません。福島で、県民の立場の医療拠点を打ち固めることが医学の面からも重要になっています。この度は、基金・募金のご協力ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
2020年10月
日頃より福島にお心をお寄せくださりありがとうございます。8月末に安倍首相が辞任し、菅伸首相が就任しました。菅首相こそ、官房長官として安倍政権の政権私物化の証拠隠滅、居直りの先頭にいた人物です。会見ではいつも、内容には答えないでただ「指摘はあたりません」と述べ、とことん不誠実を貫いていました。新政権は、二階氏を含め、政権私物化チームの自己保身政権に他なりません。様々な疑惑にも再調査を否定し続けたのはそのためです。しかも総裁選の中で菅氏は「政策に反対する官僚には異動してもらう」と露骨な恫喝発言をしています。これまで以上の忖度をあからさまに強要したものではないでしょうか。
福島では、8月31日、県民健康調査検討委員会が開かれました。安倍政権、菅新政権と選ぶところのない厚顔無恥のウソと隠蔽のための会議でした。星座長の強引な議事運営で甲状腺検査を幕引きするための措置が決められました。現在(もっとも、新型コロナのために休止中ですが)検査の中心になっている学校検診について、学校側の意見を聞くという事なのですが、聞く対象は20校だけ、しかも、どの学校なのか、誰の意見なのかは秘密だというのです。密室で、政府や県の意向に沿った結論を導こうとしているのが見え透いています。検討委員会の公的統計に入らない仕掛けで、たくさんの甲状腺がん患者が増えていることが隠しきれなくなっていることで、強引に打ち切りに向かっていると考えられます。
安倍政権以来の政権私物化、原発再稼働政策と、それに付き従う福島県政をそのままでは、福島県民の命と健康を守ることはできません。福島の医療現場に於いて、どんな圧力にも負けないで真実を訴え続ける診療所の責任はますます大きくなっています。汚染水の海洋投棄に反対する運動や、放射能の除去を求める農民や住民とも連携しながら、子どもたちの健康を守るために全力を尽くしていきたいと思っています。この度は、基金募金のご胸六ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
2020年9月
日頃より福島にお心をお寄せくださりありがとうございます。
7月29日に広島地裁で「黒い雨」裁判原告勝利の画期的判断が出されましたが、政府は8月12日、広島市、広島県の反対を押し切って控訴しました。75年前の原爆投下の際、その熱風で水蒸気と共に巻き上げられた大量の放射性物質が真っ黒な雨として降り注いだことで多くの人々が被曝し、原爆症に苦しめられてきた問題です。政府はずっと「最初に認められた範囲」以外を門前払いしてきました。75年たってなおというのです。「最初に認められた範囲」とは、被爆直後、自らも被曝者である6人の測候台職員が日帰りで歩いてようやく調べた範囲のことです。その範囲でさえ、被曝者とみとめられるのは1976年、被爆から31年後のことでした。その後の広島市の調査では少なくともその6倍の範囲で「黒い雨」が降ったことがわかりましたが、それは無視されたままです。
福島原発事故の直後に、大学などの研究機関が入ることを国や県が介入して中止させることがおこりました。子どもに限定された甲状腺検査にも絶えず縮小圧力がかけられ、最近は新型コロナを口実に学校検診が中断されたままです。これはICRPなどの国際核マフィア、核武装国グループが放射能の非人間性を隠し通す意図が貫かれているため、日本政府もその一員です。75年前の広島でも、10年前の福島でも同じ圧力がはたらいているということなのでしょうか。
「黒い雨」裁判のもうひとつの重要な点は、内部被曝を認めた事ですが、政府は福島原発事故に対しても内部被曝を否定し続けています。福島の子どもたちと広島の75年前の被曝者たちとは、共通する課題に直面していると言えるでしょう。福島の子どもたちを守っていくためにも、政府や県の圧力とたたかい、被曝と闘う医療をまもっていかなければなりません。この度は、基金募金のご協力ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
2020年8月
日頃より福島にお心をお寄せくださりありがとうございます。豪雨災害で九州を中心に多くの犠牲者、被災者を出してしまいました。毎年のように犠牲者が出るようになっていますが、何年も前から予測されていたことであり、利潤優先社会の犠牲だと言わねばなりません。アメリカや中国はその事実さえ認めず炭素排出を拡大しています。安倍政権は、世界から避難されている石炭発電を一部削減すると発表しましたが、その陰で、原発を4倍に拡大する方針を潜り込ませていました。
福島では、トリチウム汚染水海洋放出問題が焦点になっています。既に13の市町村議会が全会一致で反対決議を上げていますが、知事のあいまいな態度の中で県議会は態度を決めませんでした。実は世界の原発でトリチウムは環境に放出されており、その危険性が隠されています。理由は処理コストが高くなるということだけです。福島第一原発のトリチウム汚染水の片をつけることが原発再稼働をすすめるための関門となっており、再稼働を許さないためにも、海洋放出させてはなりません。
政府は新型コロナを口実に、海洋放出のための「意見聴取」も一人ずつ別々にして声をあげさせないようにしていますし、県は県民健康調査検討委員会も傍聴を閉め出しています。コロナ自体でも検査を抑えて感染の実態をわかりにくくしていますが、放射能被害も甲状腺エコー検査を抑えようと、元の調査検討委員を中心に学校健診を中止させるためのキャンペーンをはじめました。議事録の隠蔽なども共通しています。
まずは福島の子どもたちをまもりぬいていかねばなりません。同時に新型コロナとたたかっていくためにも国民の健康よりも利権を優先する安倍政権とたたかっていくこと必要です。また、全面的な医療崩壊の危機ともたたかいぬいて「ふくしま共同診療所」を守っていくことでも重要な局面に入っています。この度は、基金募金のご協力ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
2020年7月
日頃より福島にお心をお寄せくださりありがとうございます。新型コロナの緊急事態宣言は解除になりましたが、既に北九州市、東京都など「第2波」の兆候がでてきています。解除にあたっては何より「第2波」に備えた体制が必要で、医療体制、PCR検査の拡充が前提であるはずなのですが、現実は逆です。さすがに与党の中でも疑問の声がでているようですが、政権中枢は「のど元過ぎれば」を狙っているようです。
この最中に、とんでもない腐敗が明るみに出てきました。国民の困窮に付け込んで私腹を肥やしていたのです。中小企業を支援する「持続化給付金」を769億円で受注した社団法人がトンネル会社で、「電通」にそっくり再委託していた、その入札経緯を経産省は隠しています。同じ構図で計画されていた「GoToキャンペーン」は公募の途中で急きょ中止されました。その後、消費増税の際のキャッシュレスポイント還元制度もトンネル会社を通して「電通」だったことが明るみに出ました。オリンピックのキャンペーンも「電通」、自民党の改憲キャンペーンも「電通」、この癒着のもとで第1次、第2次の巨額の補正予算が組まれているのです。
福島では、コロナを口実に県民健康調査検討委員会も傍聴を閉め出してWEB会議として行われました。その結果、患者数の集計など、前回会議での約束が無視されました。今月はじめには、政府が飯館村の避難指示を除染なしで解除する方針が明らかになりました。これ事態が「除染は国の責務」と定めた特措法に違反するものですが、原発事故による「緊急事態宣言」が継続されていることによるものです。
新型コロナに隠れて放射能被害を見えなくしようとしている安倍政権とたたかい、福島県民の命と健康を守ることが、コロナとたたかうにあたっても重要なものになるでしょう。また医療崩壊ともたたかい抜かなければなりません。基金募金のご協力ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
2020年 6月
日頃より福島にお心をお寄せくださりありがとうございます。新型コロナは世界に広がり、5月はじめで死亡は25万人を超え、毎日増え続けています(東アジアの死亡率は低い)。医療者たちが高い感染リスクの中でギリギリの奮闘を続けていることで辛うじて堤防決壊が防がれています。
世界的に新自由主義のもとで医療抑圧されてきたことが医療崩壊の危機を招いていますが、その中でのご努力です。日本ではこの30年で保健所が半分になっているためPCR検査の異様な少なさです。それ以上に信じられないのは、この期に及んで政府も東京都も病院削減をやめていないことです。政府は公立病院削減を予算計上、東京都は都立病院の独立行政法人化の手続きを決めました。これらの病院が新型コロナとの最前線でたたかっている最中だというのに、目先の事態さえ乗り切ればいい、後は切り捨てようということです。
原発事故があっても再稼働をすすめ、そのために被曝の影響さえ隠すのと同じです。次の感染症への社会的責任よりも目先のコスト削減と利潤を優先する姿勢ではないでしょうか。
「ステイホーム」ができない人、そうするわけにはいかない人たち、感染リスクを負って働いている人たちがいて、私たちの生活もなりたっています。経済体制よりも人々の生活保障が優先です。
福島県の感染者数は81人(5月8日)ですが、甲状腺がんは疑いを含めて公式発表だけで271人です。緊急事態宣言の中で保養にも自由に行けない状況で、まるで放射能と新型コロナとの挟み撃ちにあっているかのようです。新型コロナに隠れて放射能被害を見えなくしようとしている安倍政権とたたかい、福島県民の命と健康を守ることが、コロナとたたかうにあたっても重要なものになるでしょう。この度は、基金・募金のご協力ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
2020年5月
日頃より福島にお心をお寄せくださりありがとうございます。「オリンピックやってる場合か!3・11福島行動」に全国から多くの方々にお集まりいただきました。新型コロナの状況の中で最大限の防護措置をとっての開催でした。ご協力ありがとうございました。
オリンピックが1年延期と発表されました。全世界に感染が拡大している中で、1年程度で収束できるとは思えません。ただただ政権の崩壊を先延ばしするための1年です。しかしそれは、福島にとっては同調圧力と「アンダーコントロール」のウソが続いている1年でもあるのです。オリンピックは中止しかありません。
新型コロナの世界的感染は、文明的な転換をもたらすような重大事件です。国内では東京を中心に深刻で収束を見通せません。感染に負けず、生き抜いていく連帯をつくっていきたいと思います。
しかし他の国と比べて桁違いの検査の少なさからは、実際にははるかに多くの感染者が隠されているとの疑念がぬぐえません。意図的に隠しているのかどうかはともかく、新自由主義によって保健所が減らされてきたことの影響は間違いありません。政府は昨年、424の公立病院を名指しで削減する方針を示しました。コロナ蔓延の後だったらどうなっていたでしょう。人の命も顧みない安倍政権のもとでは医療崩壊も避けられず、私たちの命も危険にさらされるでしょう。
福島では、一貫して放射能被害を小さく見せる作為が続いてきました。甲状腺がんの数字さえ低く抑えられ、なお検査を縮小する動きがやみません。コロナ感染とたたかいながら、同時に甲状腺検査打ち切りを止め、子どもたち、県民を救い出さなくてはなりません。そのためにたたかいぬきます。この度は基金募金のご協力ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
2020年4月
日頃より福島にお心をお寄せくださりありがとうございます。2月13日の福島県民健康調査検討委員会で欠席の津金委員から文書で「学校健診を止めるべきだ」との驚くべき提案が出されました。これはほとんど甲状腺検査そのものを中止すべきだという主張です。それに対して星座長は「実態を調査する」と前向きの議論集約を行いました。そこに一貫しているのは放射能被害をできるだけ小さく見せたいという要求です。その際の口実は「実害のないガンが検出されている」「ガンと診断されると不安になる」というものです。しかし直前の2月3日には県立医大の国際シンポで、甲状腺がんが手術の大半を執刀した鈴木教授が、「73%でリンパ節への転移があった」「再発例が多い」など深刻な実情を発表するとともに、長期に甲状腺検査を継続することが必要だと表明しています。これを完全に無視した議論です。
一方で、新型コロナウィルスをめぐる安倍政権の対応は不可解です。根拠も準備もなしに学校を一斉に休校にする派手なパフォーマンスも、クルーズ船をめぐる失策の目くらましだとの評もあります。もっと奇怪なのは検査です。2月末まで、1日約90件しか検査していません。政府の発表でも1日3800件の能力があるというのにです(韓国では1日8000件)。肺炎で入院している人すら拒否されています。「オリンピックを前に、患者を少なく見せるため」との観測もあります。新型コロナウィルスの放射能との違いは人から人への感染ですから検査しないこと自体が感染拡大になります。まさか、ですが、安倍政権だけに疑念もぬぐえません。
ウソと隠ぺいで固めた「放射能の影響ではない」を打ち破って、甲状腺検査打ち切りを止めましょう。子どもたち、県民を救い出さなくてはなりません。そのためにたたかいぬきます。この度は基金募金のご協力ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
2020年3月
日頃より福島にお心をお寄せくださりありがとうございます。震災からもうすぐ9年、「アンダーコントロール」の大うそから始まったオリンピックの本当の狙いはフクシマを葬り去ることだったのでしょうか。3月には、双葉町など帰還困難区域で、駅前だけ避難指示解除です。少し歩けば危険地帯。第1原発直近を通す常磐線を全線開通し「復興」を印象づけるためです。あわせて、国道6号線で2輪車の通行禁止が解除されます。それでも停止は禁止、交通安全からはありえないのですが、放射能被曝が危険だから停まれないのです。
加えて「聖火リレー」を小中学生を伴走させて帰還困難地域を通します。道路だけ除染して周辺は高線量のまま。こどもを被曝させて「アンダーコントロール」の辻褄合わせでしょうか。その「聖火リレー」はJヴィレッジから出発します。そのJヴィレッジで、昨年末にもホットスポットが発見され、東電がこっそり除染しました。しかしその後もまだ見つかっています。いくら除染しても周囲の山林から放射性物質が風にのってきますから。最後までウソと隠ぺいのオリンピックです。
2月3日の県立医大の「国際シンポジウム」で、同大の鈴木眞一教授が、甲状腺がんの手術を行った7割でリンパ節への転移があったなど深刻な状況を報告し、甲状腺検査を長期にわたってつづけることが必要だと述べました。彼は県民健康調査検討委員会の初期のメンバーですが、いつまで政治的に隠ぺいを続けられなくなっている状況が迫っているように感じられます。
ウソと隠ぺいで固めた「放射能の影響ではない」を打ち破って「、子どもたち、県民を救い出さなくてはなりません。そのためにたたかいぬきます。この度は基金募金のご協力ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします
2020年2月
あけましておめでとうございます。日頃より福島にお心をお寄せくださりありがとうございます。
「ふくしま共同診療所」も開設8年目に入りました。この間、「共にあゆむ会」の発足をはじめ、地域でのご支援もしだいに厚くなってきています。ひきつづき全国の皆様にもより一層のご支援、ご協力をお願いいたします。
昨年末、二つの特徴的な裁判の判決がありました。10月15日、福島地裁の判決では、「農地から放射能を除け」という請求を退けました。理由は「放射能物質はすでに土と同化しているため、東京電力の管理下にはなく、むしろ農家が所有しているといえる」だそうです。被害者が責任を負うべきだという逆立ちです。12月17日には山形地裁で、「自主避難者」の賠償請求を全面的に否定する判決がありました。この種の裁判での被告=「国」の主張は、「『自主避難』は避難していない人たちに対立している」「原告の主張は国土を損なうものだ」というものです。家族が離れ離れになる「自主避難」がどれほど苦しいか、それだけに避難したくてもできない人がどれほどいるか、レントゲン室を超える放射能の中で子どもたちとともに生活させることがどうして正当だと言えるのか。その上、放射能で汚染させた政府と東電ではなく、避難した人をとらえて「国土を損なう」などと、よくも言えたものだと思います。
この国の裁判所は公正さや正義を投げ捨て、ひたすら政権におもねる存在になり下がっているようです。安倍政権と、その下で放射能被害を隠す内堀県政ともたたかわなければ私たちは生きられません。県民の命と健康を守るためにも、これらとたたかいぬきます。この度は基金募金のご協力ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
2020年1月
日頃よりの皆様のご支援、本当にありがとうございます。サンライズ21号をお送りいたします。予定よりかなり遅れての発行となり、皆様にはご心配をおかけしました。
今号は、「共にあゆむ会」での渡辺瑞也医師の講演をメインに構成しました。3・11当時、南相馬市小高区で精神病院を開いておられた先生と患者さんたちの緊迫した過酷な避難の過程や、その後もご本人を含め、お知り合いに「がん」が多発している様子などを伺い、あらためて福島の苦悩の原点に接したような講演会でした(渡辺先生の著書『核惨事』(批評社)参照)。
昨年末には、ちょうど本号の編集過程だったのですが、福島県民に追い打ちをかけるような判決が相次ぎました。10月14日には福島地裁で、「農地から放射能を除け」との請求に対して「放射能物質はすでに土と同化しているため、東京電力の管理下にはなく、むしろ農家が所有しているといえる」として退ける判決でした。続いて12月17日、山形地裁は「自主避難者」の賠償請求を全面的に否定する判決を出しました。「自主避難者」の権利をめぐる裁判で被告=「国」は、「『自主避難』は避難していない人たちに対立している」「原告の主張は国土を損なうものだ」と主張しています。避難したくてもできない多くの県民を踏みにじり、「自主避難者」の言語に絶する生活と苦悩を踏みにじり、それを信じがたい国粋主義で総括する。この「国」にも裁判所にも一辺の公正さも論理も人間性も残っていません。ごく一部の支配者、富裕層のためだけのものではありませんか。
昨年はまた、福島は深刻な台風被害に見舞われました。台風19号では全国で99人が犠牲になりましたが、そのうち福島県は32人(隣接する宮城県丸森町は11人)です。これも単に自然災害とすることはできません。一昨年も西日本豪雨で223人の犠牲を出しています。既に20年以上も前から「このまま温暖化がすすめば台風の大型化、海面上昇などが深刻化する」との報告が出されていました。すでに警告されていた段階がはじまっているのではないでしょうか。このままでは後戻りできない「気候暴走」が始まると言われています。北極の氷が解けることで地球が吸収する熱量が増大するなど、スパイラルが加速するというのです。
東電という直接の犯人がいる放射能汚染とは少し様相が違いますが、いずれも富裕層の貪欲の為には人の命などどうでもいい、10年後の地球と人類全体がどうなろうとも今の自分たちが儲かればいい、という資本主義、新自由主義による大量殺人に等しいのではないでしょうか。
グレタさんは国連気候行動サミットで「私たちは絶滅を前にしている。なのに、あなた方はお金と永遠の経済成長という『おとぎ話』を語っている。よくもそんなことが!」と訴えました。同じ会議に出席していた小泉環境相は、日本の石炭火力発電について質問されても居直るだけ。
トランプと同調して石炭火力発電を増やし続ける安倍政権、上から下までウソで固めて私益をむさぼる安倍政権、原発再稼働と放射能安全神話で福島県民の命と健康を損なっている安倍政権をなんとしても終わらせたいと心から思っています。
2020年 1月
日頃より福島にお心をおよせくださりありがとうございます。台風19号と直後の豪雨とが連続し、全国で被害が多発し、福島は特に大きな災害に見舞われました。
31人の方が犠牲になり、多くの県民が避難所生活を余儀なくされています。診療所とスタッフ、建設委員会の関係者にあっては比較的に軽い被災で済んだのですが、患者さん、保養に参加されている方の中には深刻な被害にあった方もおられます。
多くの方から暖かい励ましをいただきありがとうございます。救援カンパをお送りいただいた方もいらっしゃいます。通信欄に明記されてあれば、通常の診療所への基金・募金とは区別して豪雨被害を受けている方への支援に振り向けるつもりでおります。
福島では、阿武隈川があちこちで決壊しました。阿武隈山地はじめ山間部は全く除染されていません。そこからおびただしい流木が住宅地に押し寄せました。また、阿武隈川の川底に沈殿していたセシウムが巻き上げられて住宅街を覆っています。原発事故から8年をすぎてまた高濃度の放射能汚染にさらされることになりました。後かたづけなどの作業でも砂埃を吸い込んでの内部被曝の危険が高まっていることが危惧されてなりません。この点は、宮城県丸森町で、全く同じです。ここは、福島県境に接し、原発事故直後の放射能プルームも通ったところです。同じ被害を受けていながら行政区域が違うという事で不当な扱いを受けてきました。その地が今回、最も過酷な被害を受けています。
皆様のご支援に支えられながらではありますが、私たちもできる限り、被災地の力になり、被災者の健康を守るために力を尽くしたいと思っています。今後ともよろしくお願いいたします。
2019年10月
日頃より皆様のご支援、本当にありがとうございます。サンライズ20号をお送りいたします。
予定よりかなり遅れての発行となり、皆様にはご心配をおかけしました。
今号では、布施院長からは「ふくしま共同診療所」の日常的な診療について紹介をお願いしました。甲状腺検査だけでなく、県民の健康を守るための様々な活動も知っていただくことが、診療所の目的のためにも重要だという事から、いただいていたご質問にお答えしたものです。
「ふくしま共同診療所と共にあゆむ会」の結成の記事と併せて、後藤会長からもご挨拶を寄せていただきました。診療所の患者さんたち、保養に参加されているご家族などが時間をかけて交流を深められてきた中で、今回、「共にあゆむ会」の結成に至りました。診療所建設委員会も連携を強めながら、協力して診療所の強化、発展に力を尽くしていきたいと思います。
県民健康調査検討委員会の星前座長が、8月26日、内堀福島県知事と面会し、「放射能の影響とは認められない」との報告を行いました。検討委員の任期は7月末で切れているのですが、県は星氏の再任を前提に会談しています。本号1面で危惧している通り、「放射能の影響とは認められない」が独り歩きしはじめているようです。それが帰還困難地域を貫通する常磐線全線開通やオリンピック招致などの正当化につながり、再臨界の危険がある中で住民を帰還させようとする強引な政策に利用されようとしています。また、この会談の中で星氏は今後、甲状腺検査そのものが新しい段階に入ることを表明しています。県は表向きには依然として甲状腺検査の縮小は否定していますが、実務的にはどんどん縮小化を進めています。特に20歳を超えた人の受診率は4%、2013年以降に生まれた子供たちは学校健診の対象から外されており、検査を受ける人数は年々減っていっています。その上、結節やのう胞が一定の大きさを超えると「経過観察」という名目で一般診療にまわし、県民健康調査検討委員会の統計から外されることになり、ますます統計的には意味のないものにさせられてきています。
安倍政権は、意図的にこの検査を無意味化し、放射能の危険を隠すことで、原発再稼働をはじめとする核政策をすすめようとしています。そのことによって福島県民の被害も隠され、犠牲が拡大していっています。INF(中距離核戦力全廃条約)が8月に失効させられたのを契機に、米ロともに新たな各軍拡に手を染めはじめ、アメリカはアジアへの配備を計画しています。この状況の中での日本のプルトニウム保有と核技術の維持をはかっている姿勢にも疑義が持たれています。
私たちは粘り強くこの危険を明らかにすること、健康被害を隠そうとする意図を超えて表れてくるデータをできるだけ拾い上げていくとと同時に、少しでも、県民の健康を守るために診療により力を尽くしていくことが求められていると考えています。
今後とも、皆様のお力を寄せていただきますようお願い申し上げます。
2019年9月